第3章 誘惑ボイス
同日の放課後・・・
あたしはまた1人で今度は音楽室で黄昏ていた。
リドルといいフロイドといい・・・
どうしてあたしに歌わせないようにするわけ?
――――♪
歌わないようにと制限されると、人というものは歌ってしまいたくなる。あたしは1人・・・音楽室の窓の外へ向かってアラビアンナイトに出てくるプリンセスの歌を歌った。プリンセスの内に秘めた思いを叫ぶあの歌
「あ、やっぱりココにいたんだな」
『えっ…あぁ、カリム』
気が付いたら、音楽室の入り口にはカリムがいた。
いつもなら歌に入ってきて一緒に歌うのだが、この曲は知らなかったようだ。
「すごくいい曲だな!」
『うん、あたしもすごく好きな曲』
「曲もだけど…なんていうんだろうな」
カリムは、どこか照れているような面持ちで音楽室に入ってきた。窓辺にいるあたしにゆっくり近づいてきてなぜかあたしの手を握る。
『ん?どうしたの?』
「いや…なんというか。あ!そうだ!!元気だ!!」
『え?』
「お前の歌聞くと、すっごく元気がでるんだ!!そうだ!!それが言いたかったんだ!!」
と、さっきまでの神妙な面持ちがが消えていつもの元気なカリムになった。・・・と思ったら、カリムはおもむろにあたしに頬にキスをした。
『えぇ!?』
「へへへ、オレ…アイのこと大好きだ!!また歌聞かせてくれよ!!」
『はぇ…?』
またなー!!と言って、カリムは満足げに出て行った。
残されたあたしは、きっと過去一間抜けな顔をしていたと思う。まさか、あんな告白・・・
歌が好き・・・その言葉は嫌というほど聞いた。
でも・・・アイが好きは、初めてだった。しかも、あんな純粋な言葉で
『…ナニコレ』
リドルやフロイドに言われた事なんてすっかり忘れてしまっていた。すっごく嬉しかった。