第3章 誘惑ボイス
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「うぅぅうぅぅうう!!!」
音楽室を出たカリムは、珍しく廊下に蹲って頭を抱えていた。
自分はなぜあんなことを言ってしまったのか・・・と
「おいカリム。廊下の真ん中で蹲るな。通行の邪魔だ」
「んぁ~ジャミルぅ~」
「…今度はなんだ」
「…オレさ、アイの事好きなんだよ。」
「…そんなこと、お前見てりゃ…」
「いや、友達としてじゃないくて…その、なんか…アイの歌声を聞いていると…なんていうか、胸がギューってなって…だんだん、歌ってるアイの事もすっげえ綺麗だなって思ってきて、それで…」
言葉もおぼつかなくて、言ってることもめちゃくちゃになっているがカリムは思い付く限りの言葉を並べていた。
「その…アイの声を聴くたびに、アイのことをどんどん気になってくんだ…。なぁジャミル…これってなんだと思う?」
顔を真っ赤にしてジャミルを見るカリム
ジャミルはその顔をじっと見つめて、一言言った。
「…ただの気のせいだろ」