第3章 誘惑ボイス
リドルに誘われやってきたのは、リドルが寮長を務めるハーツラビュル寮の談話室。そこには、ハーツラビュルのトレイさんとケイトさんもいた。
「やぁいらっしゃい。」
「やっほーアイちゃん。」
『こ、こんにちは』
「トレイがタルトを焼いてくれたんだ。よかったら簡単なお茶でもと思ってね。」
『え、いいの?』
「もちろんだ。さぁ、君はここへ」
と、きれいに飾られたテーブルとお揃いの椅子に通されあたしは素直に座った。トレイさんが紅茶とフルーツで彩られたタルトを出してくれた。『いただきます』と一口口に運ぶと・・・幸せがはじけた。
『はぁ~…トレイさんのタルト最高…』
「本当か?ありがとう」
「ホント、アイちゃんて美味しそうに食べるね。見ててすごく気持ちがいいよ」
トレイさんもケイトさんもあたしがタルトを頬張るところを見ているだけだったが、あたしはそれ以上にタルトが美味しすぎて気にならなかった。
「…アイ。食べながらでいいから聞いてほしい。」
『ふぇ?』
「君…。最近変わったことはないかい?」
『…?』
「たとえば、歌を歌っていると人が必ず来る…とか」
・・・リドルが何を言っているのか分からなかった。
あたしは、歌を歌えば必ず誰かしらが足を止めて聞き入ってくるから・・・
『…気にしたことないけど』
「…そうか。今は、歌は控えているのかい?」
『うん、この前の事があったからね』
「そうか。引き続き気をつけた方がいい。」
リドルはそれだけ言って紅茶を飲んだ。
あたしは、少しだけリドル達の反応が気になった。
だって、リドルだけでなくトレイさんもケイトさんも何か気がかりに思っていそうな顔をしていたから・・・