第3章 誘惑ボイス
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またアレから数日経った。
この前の一件以来、告白してくる人が減った。
というのも・・・
あの告白してきたオクタヴィネル寮の生徒が、大怪我の末に自主退学したと学園中の噂になったのだ。・・・まぁ、リーチ兄弟が絡んでいるらしいと専らの噂だが
『まぁ…平和になったからいいけど…』
「おや、何が平和なのですか?」
『うぉ!?…あぁ、アズール…さんか』
昼休み、中庭で1人で黄昏ていたところに例のオクタヴィネル寮の寮長様が現れた。
あたしは、この人が苦手だった。
・・・いやあの寮生みんな苦手なのだが
「先日は我が寮生の粗相のせいでご迷惑をおかけしてしまったようで、改めて謝罪をと思いまして…」
『いえ、終わったことですので…』
「…いや、しかし貴女の歌は相変わらずの評判ですね。私もあなたの歌を遠巻きに聞いていましたが。もし差し支えなければ、一度歌っていただけないかと思うのですが。」
『…すみません、あたし今歌自粛しているんですよ。またの機会で…』
「まぁそうおっしゃらずに」
中庭に座っていたあたしは、アズールのそばから離れようとしたがすぐにアズールに腕を掴まれてしまった。あたしはその目には覚えがあった。
『…あたしの声をどうしたいんですか?』
「…はい?」
『その目…あたしの大嫌いな人に似てる。金儲けとか利用価値とかそういう風にしか見ていない目…。』
「・・・。」
あたしの腕を掴んでいるアズールの手の力がちょっとだけ強まった。きっと図星を突いたのだろう。すぐに笑顔に戻ったのが余計に怪しい
「私はそんなことはしませんよ。純粋に貴女の声が…」
『やっぱり声なんですね』
あたしはアズールの手を振り払って校舎に戻っていく。
結局声だけ・・・あいつは守銭奴の匂いがする。
あたしの大嫌いな・・・母と同じ
「アイ。」
『…あ、リドル』
多分廊下を女子らしからぬ歩き方をしていたあたしを呼び止めたのはリドルだった。女性なのだからもっとレディらしく歩きたまえと注意された。