第2章 幻影シンガー
『―――?!??!?』
突然のことにあたしは言葉にならない声を上げたと思う。
暴れて離れようとしても頭抱えられて、逃げようとしても空いている手で腰を押さえつけられているから簡単には逃げられなかった。
『…ッぷはっ!!なっ、なんなんだよ!いきなり!!』
「あぁ?味見」
『味見って、あたしはエサじゃない!!』
「エサだろ、キャンキャン騒いでるくせに弱くて…俺様ならどんな草食動物でも美味しく食ってやるが?」
『…結構です!!失礼いします!!』
何なんだよあの失礼な男は!!
人の歌をまぁまぁだといい、挙句には人の事をエサとか・・・
腹立つーー!!あんなことを言われたことがなかったためか、無性に腹が立った。
イライラしながら植物園を出ようとしたとき、入り口で出合い頭に誰かとぶつかりそうになった。165センチのあたしよりも少しだけ背が高いこれまた猫耳の男。さっきの奴に比べて小柄だけど・・・
「うわっすんませ…って、あんた噂の歌うまの?」
『…失礼します。』
そのケモ耳もあたしのことを見て歌のうまい奴って・・・
だんだん、その言葉すらイラ立ちを覚え始めた。
・・・いやいや、落ち着け
いつもの事だ・・・苛立つだけ馬鹿だ。
どうせあたしは、歌だけだ。
あのキスもただからかってるだけ。