第2章 幻影シンガー
***
「ねぇねぇ、アイちゃん。自分の前なら歌ってくれる?」
『え…』
あたし達は、昼休みに植物園の草原に座って話していた。
グリムはクルーウェル先生の補習でいなかった。
「さっきって、ちょっとまだエース達に距離感じてる風に見えたから。アイちゃんって実はガード堅そうというか人間嫌いそうだから」
『えっと…さすが監督生様、よくお気づきで…』
「でも今なら誰もいないし、歌ってくれる?」
『…まぁ、監督生様のご所望とあらば…』
と、はぁ…とため息をついて一応周りを確認してすぅ…と息を吸って歌い始める。歌ったのは、ディ〇ニーソングの中のライオンの王の娘が敵国のライオンの王子との恋を歌った歌。
―――――♪
この曲あまり一般的じゃないけど、あたしはどちらかというとライオンの王と幼馴染の雌ライオンの恋の歌よりもこっちの方が好きだった。
『……ぁ』
「あ…アレ?」
歌い終わると、ユウは目から大粒の涙を流していた。
あたしの歌で泣く人は何人も見た。けど、今回はなぜか驚いた。
「ご…ごめんね、なんか初めて聞いたんだけど…いい曲だしアイちゃんの歌改めて近くで聞くと…凄く綺麗で…ごめんちょっと顔洗ってくるね!」
と、立ち去ってしまった。
その背中を見送って草原に寝そべって植物園の天井を見る。
彼女の涙を見て久方ぶりに、身体が震えた。
アレは、父の前で歌った時と同じ感覚だった。
嬉しかったんだ、純粋に・・・
「ほぉ…お前だったか。さっきの歌は」
『はっ!?』
誰もいないと思っていたところに、知らない男の声
地を這うような低い声にあたしは少しビビってしまった、がその声の主の気配を感じてすぐそばに立っている気の上にその主がいた。
「ん?あぁ…魔法の力を持たないあの人間の女か。」
『…何あんた。』
「ふん…歌はまぁまぁだな。」
『まっ!?』
まぁまぁ・・・まぁまぁ・・・?まぁまぁ?!?!?!?