第7章 それぞれ
かかしサイド
あれから月日だけがたった。
任務は絶対。
前と変わらず仲間の命にも責任がある‥
だが自分に対してはどうでもいいと思うようになった。
はたから見れば、命知らずもしくは、生き急いでいるようにみえただろう。
だが、生きて帰りたいと思う気持ちがうすれてしまっていた。
自分の家に帰る事すらつらくなる。
そこには思い出があるから。
今日も暗殺任務…
なんとか終わったけど、とにかく早くこの汚れた自分を洗い流したい。
家に帰って風呂場に直行する。
早くすべてを洗い流さないと、闇が襲ってくる感じがした。
はやく、はやく…
綺麗になったはずなのに…
まただ、心が、真っ黒に侵される。
息が苦しい…苦しい…
あぁ…もうこのまま呼吸することすらどうでもいい
もう生かされている意味すらわからない
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『かかし、私のこと見て。目閉じたらまた不安になるかもしれない。今私のことだけみて、呼吸するの。ほら、もう不安なんか消えちゃうよ?』
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蘇る愛しい人の声。
目を開けてもそこには姿はないけど、思い出す彼女の声に同調するように呼吸を整える。
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なんとか自力で闇にのまれずにすんだ…
こんなことを繰り返している自分をひどく弱いと思った。
彼女との出会いが、存在が自分を大きく変えたのに、俺はまた元通りになってしまっている。
互いに別の世界に生きるもの同士、でもなぜ彼女に出会ったのか。
俺は彼女から学んだのに、こうしてまたもとに戻って過去と同じように生きている。
「…俺も…ほんと弱いね。これじゃアンナに合わせる顔がないでしょーよ…」
ぐっと拳を握りしめた。
アンナとの出会いを無駄にはできない.
まだあきらめたくない
自分の拳を見つめ、久々に願いを込めた。
「俺は…あきらめないよ。もう一度会えるまで、必ず生きてここに帰ってくることを」
久しぶりに心がじんわり温まるような気がした。