第1章 彼と私
しばらくくつろいでたわいもない話をしたあと、かかしに今日はもう寝ようとベッドへいくことをすすめられた。
でも、冷静になれたとはいえ、まだ考えることはたくさんある。眠れる気がしない。
「かかし、さきに寝てて。
たぶん私、まだわけわからなくてきっと眠れない。
ベランダで少し外見てくる。」
「…わかった。これ羽織っていきな。
せっかくお風呂はいったんだし、湯冷めしちゃまずいでしょ」
上着を渡され、そのままベランダにでた。
なんてきれいな星空だ。
私の住んでたところよりも、空も空気もきれいなところだ。
私も私で仕事に追い込まれていた日々を送っていた。
人の生死にかかわる仕事だ。責任は重い。
それでも、人のために役に立ちたいと前向きに毎日取り組んでいた。
別の場所に突然きたわりには、なんだか癒されてるな。
ちょっと笑えた。
考えても解決策もでないまま、そのままぼんやりとすごした。
部屋に戻ると、かかしは眠っているようだった。
私がいるからそのままソファで寝ている。
ほんと申し訳ない。
かかしの銀髪にそっと手をおいて、起こさないように静かに伝えた。
「…なんか‥ごめんね‥ほんとにありがとう」