第6章 裏切り
アンナサイド
「いった~…」
体をゆっくりと起こす。
何が一体どうなったのか。
よく見ると膝と腕がすりむいていて、持っていたカバンの中身が無残にも地面に散らばっていた。
こけたのか…やってしまったなー
と思いながら、散らばったカバンの中身をかき集める。
ん…頬っぺたがなんか濡れてるな…
それを手でぬぐった瞬間、背筋がゾクリとした。
「ここって…」
当たりを見渡すと、いつもの病院からの仕事帰りの道のりで珍しく星がたくさん見えていた。
ここがどこかわかった瞬間に、かかしと過ごしていた日々が一気に走馬灯のように頭にかけめぐった。
「……」
感情をあらわにしながらも、自分を守ろうとしていた
「かかし…」
どこにもいかないでって言ってくれた
「…っ…か‥かし…」
両目から大粒の涙をこぼしていた
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『アンナがいるから、俺は絶対生きて帰ろうって強く思える。それに絶対にアンナのことも守りたい。
ここが俺の帰る場所だから、それはわかってくれる?』
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銀色の髪も、眉を下げて笑う顔も、大きな手も、暖かいぬくもりも…たくさんくれた愛しい言葉たちも…
まるで夢だったかのように私はすべてを置いて自分の世界に帰っていた。