第6章 裏切り
こんな時に限って、アンナとの思い出が走馬灯のように頭にめぐる。
くそっ縁起でもない。
きっと大丈夫だ。
なんとかなると思いなおしアンナをみると、彼女がどんどん透けてきている。
「アンナ!?」
一体どういうことだ!?
一度足を止め、体全体を確認する
全体的に…透けてきている…?
俺は大きな恐怖に完全に包まれた。
「アンナ‥頼む、どこにもいかないで‥」
抱いている手が、どんどんと彼女の体温と重みの感覚を失くしていく。
嫌だ…いかないで…
彼女は苦しそうにしながらも、なんとか笑って言った。
「やだな…かかし…私はずっと‥そばにいるから…泣か‥ないで…」
抱えきれない感情を吐き出すかのように、俺は両目から大粒の涙をぼろぼろと流し、泣いていた。
俺の涙が彼女の頬にいくつか落ちたのち、俺に伝わっていたアンナの感覚はすべて途絶えた。
まるで最初からそこにいなかったかのように__
何も…考えられない…
今この瞬間までこの胸にいた彼女がいない。
もう匂いすら消えていく。
彼女がここにいたことをすべて否定されるかのように、俺の手には何も残らなかった_____