第3章 現実と心の狭間
*R18 までとはいきませんが、ちょこっと甘い表現あります。好まない方は飛ばしてください。
_____________________
かかしは、きょとんとした顔で私を見た。
「かかしは、つらい経験したんだね…いっぱい後悔とか、自責の念とかたくさんあるんだね…
でもさ、守りたいものがあるほうが、人は強くなれるんだよ。誰かのために生きて帰りたいって思うほうが、心はもっと強くなる。
わたし力はないけどさ、かかしを守りたいって思うよ」
かかしは黙って聞いていた。
「過去は変わらないし、忘れろとも言わない。
でもこれからどうしていくかで未来は変えることができるんだから。過去だけに生きるんじゃなくて、一緒に少しずつでいいから未来を見てみない?
私はさ、かかしのことすごく大事で、すごく好きになった。だから‥もし同じ気持ちなら…めちゃくちゃうれしいなって思う。」
私は、かかしの両手を握りしめた。
「この手は汚れてるんじゃない。
この手は、里を、人々を、大切な人達を守るために頑張ってくれてるんでしょ?この手を、自分自身を嫌いにならないで。かかしが生きている実感が欲しいなら、私が感じさせてあげるから、これからは、ここに、私の隣にちゃんと帰ってきてくれる?」
かかしの瞳が揺れていた。そんな切ない顔を見ると自分の視界もユラユラとゆがんできた。
どうしよう…私も感情が追いつかない。
そう思った時、彼は私の手をぎゅっと握りかえして言った。
「今、生きてる実感が、アンナが俺のものだっていう実感がほしい…」
グッと引き寄せられ私達は深く唇を重ねた。
______
力強い行為のはざまに、優しさと甘さがあり、見つめるその目には、かかしの欲があふれていた。
恐れはない。
そのままぶつけてほしいと素直に思えた。
吐き出される彼の呼吸に、言葉に、全身の感覚がさらに研ぎ澄まされる。
あぁ、どれだけ重なってもなぜか心は苦しい。
かかしに対する気持ちがあふれんばかりに膨らみすぎてついていけないのだ。
だったらこのまま意識薄れるまでと彼を強く引き寄せる。
恥ずかしさも捨て、すべてをさらけだせば、かかしは口元を緩ませた。
出会って数か月でここまで人を好きになれたことなんてない。
かかしが自分のものだという実感が私もほしかった。