第3章 現実と心の狭間
かかしがようやく帰ってきた。
「…おかえり‥帰ってこないかと思ってた…」
「…俺の帰る場所は…ここだから…」
かかしはそういって、私の目の前に座った。
今日は月がとてもあかるい。
カーテンを開けているだけで、顔がはっきりとわかる。
かかしはマスクをはずして話し出した。
「俺さ…これまでにもたくさんの大切なものを失って、守れなかったんだ。でも弱さなんて見せてられない。
強く居続けなきゃならなかった。
正直アンナに会うまで、こうして自分の弱いところ誰にも見せれなかった」
かかしは本当に失ったものが多すぎたんだ…
それでもこうして生きている。
きっとそれに矛盾も感じているんだ。
「でも見ての通り俺は時々不安定で、衝動的でコントロールがきかない時がある。
その感情に振り回されてあれてる時期もあった。
でも、アンナには理性なく嫌がることしたくなくて…
そういう時はあえて家に帰らないようにして、同僚の家に泊まってたりしてたんだ。
今日は、たまたま昔の知り合いに会っただけで…何もないから…」
かかしが、正直に思うことを話してくれている。
私は一つ一つうなずきながらかかしの言葉をかみしめた。
「俺は、忍びは、つねに死と隣り合わせなんだ。
そんな自分が大切な人を作っていいのか正直わからない。
守りたいものを守れなかった自分が、また守りたいものを作るべきかもわからない。
だから、アンナに対するこの感情を…どうしていいかわからなくて‥」
「…なんだ…そういうことだったんだ…」
なんだか笑えた。