第3章 現実と心の狭間
かかしサイド
予定通り任務は終わって帰ってきた。
でも今日は精神的に落ち込むというよりも、衝動にかられているといった感じだ。
この感じで家に帰ると、アンナに何するかわからない。
彼女は、いまや俺にとってとても大切だ。
理性なくして、嫌がることなどしたくない。
こういう時は、いつも通り、適当に誰かと…と思うが、本当に今までどおりそんなことして自分が満たされるのだろうか。
これまで気ままにやってきた分、アンナの存在が大きくなるにつれて、自分がやってきたことに虚しさを感じた。
どうしていいかわからず、里内を歩いているときに、たまたま出会った女。
一度昔に関係があった。
あとくされはないが、あっちが妙に絡んでくる。
やっぱり気分はのらない。
今日もテンゾウの家にいくか…
そう思っていたところに視線を感じた。
「!?アンナ‥?」
まさか、彼女がこんな時間に里内をうろついているとは思わなかった。
しかもこの状況、あきらかにまずい。
彼女の目はゆらゆらと揺れ動いていた。
「かかし…戻ってたんだ。心配してたから‥その‥よかった。」
そういってアンナは人込みに消えた。
俺は、どうしたいんだ…
やたらとくっついてくる女を振り払って、その場をあとにした。
忍びとは常に死が付いて回る。
ましてや暗部だなんて、明日生きられるかも実際はわからない。
俺はたくさんの物を守れず、失って、また他人の命もこの手で奪ってきた。
でも心の片隅では、アンナとの距離を埋めたいこと、もしかして俺も誰かを好きになっていいのかなど、自分で望むことと、現実のはざまで身動きが取れなくなっていた。
答えがでない…
なかなか家に帰れなかった。
でも家に帰らないと誤解される。
ようやく家に帰った時はもう夜中を過ぎていた。