第2章 かかしの闇
かかしサイド 続き
玄関にはいると、アンナがこっちにむかってきていた。
こんな俺のこと見ないでほしい
幻滅しないでほしい
今俺は君のこと気づかえない
そう思ったら、いっこくもはやくこの姿をなんとかしようと、無言で風呂場にむかっていた。
今日はすごく嫌な気分がぬぐえない。
洗っても洗っても血が取れる気がしない。
頭の中で、冷血、血も涙もない奴という言葉がぐるぐると回る。
ひたすら気のすむまで洗い続けた。
お風呂からあがると、アンナは俺のほうを不安そうに見上げていた。
「俺のこと…こわい?」
彼女の不安そうな顔から、徐々にりんの最後の顔を思い出した。りんが、俺の名前を呼びながら、息絶える瞬間を…。
俺は、アンナに暗殺戦術特殊部隊に所属していることを伝えた。あんな格好で帰ってきて、隠す必要もない。
俺の質問ぜめに対して、何かを言おうとするアンナの言葉をさえぎり、俺はまくしたてた。
「アンナだって、俺のことを恐怖の目でしか見れなくなるでしょ!?殺したあいつらみたいに、俺は血も涙もない冷血だって‥はっ‥俺のことをっ!…はっ…くっ!!」
息が…できない…ひどいときは時々こうなる。
オビトの死が、リンやミナト先生の死が、殺してきたたくさんの人達の死が…言葉が映像がフラッシュバックする…
俺は…どうしたらいい?
まるで暗い水の中に沈んでいく己を哀れむように自身に問いただした。
もう息することすらどうでもいい
そう思った瞬間、アンナの言葉が俺の精神を引き寄せた。
「かかし!かかし目開けて!ちゃんと私をみて??!」
「わかる?私ここにいるから。
かかしは安心してゆっくり呼吸したらいいから。
できるよね?ほら、息吸って?
で、ゆっくり吐いて…大丈夫。
私だけ今は見てて?…ほら吸って‥‥吐いて…」
途中、また目をぎゅっと閉じてしまう。
まただ…
一気に暗い水の底に引きずりこまれる。
「かかし、私のこと見て。
目閉じたらまた不安になるかもしれない。
今私のことだけみて、呼吸するの。
ほら、もう不安なんか消えちゃうよ?」
そういって、にっこり笑うアンナに、また暗い水の底から引き戻された。
そのあとはもう…覚えていない。