第2章 かかしの闇
かかしは苦しそうにしながらも少し笑い、ゆっくり呼吸を整えたのちそのまま眠りにおちた。
かかしの穏やかな寝顔を見ながら、さっきまでの切羽詰まったような表情が蘇った。
この子は、小さいときからきっとたくさんの殺しをしてきたのだろう。
自らが望まなくても、この時代が、戦争がそうさせたのだ。奪って、奪われて…そうした中で生きながらえ、暗殺部隊の隊長になるまでに上り詰めている。
わたしの世界でも殺人者の中には、その行為を楽しんで、快楽のためにするものもいるが、かかしはそうではない。
つねに苦悩を持ち合わせて任務を遂行しているのだ。
この里と人々を、大切な人達を守るために。
私も看護師をしているから、人の死はたくさん見てきた。
あまりに経験すると人の死期がなんとなくわかってくる。
亡くなっても、やはりそうかと納得できるようになってくる。慣れとは恐いもの。そんな人の死に慣れてくる自分も嫌になるものだ。
かかしの苦悩とは違うが、私もかかしも人の死には他の人よりも身近にあるようだ。
なんとも言えない気持ちをかみしめながら、かかしの体温を感じた。
その日はかかしのそばでそのまま眠りについた。