第2章 かかしの闇
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数秒の沈黙のあとかかしがつぶやいた。
「俺のこと…こわい?」
「……」
なんて言っていいかわからなかった。
だってあんな姿みるの初めてで。
「こわいって顔してる。あんな格好で帰ってきて、いったい何してきたんだって。」
「わたしは「人を殺してきた。」
「!」
「暗部とは…暗殺戦術特殊部隊…」
暗殺…
ごくりと唾をのんだ…
忍びや戦争の話を確かに聞いていたが、さらに現実味を感じた。私が思っているよりもこの世界は甘くない。
私より年下であろうかかしが、すでに死ととなり合わせの生活を送っているのだ。
戦争を歴史としてしか知らない私は、本当に甘い。
でも…
「かかし、聞いて。わたしは「アンナからしたらさ、きっとまともじゃないよね、ほんと。それでも、俺のこと普通に見れる?この血に染まった手で、お前は触られても平気なのか!?」
私の言葉をさえぎるように、立て続けに質問される。
かかしは気がたってる。
「お前も、俺のことを恐怖の目でしか見れなくなる!
殺したあいつらみたいに、俺は血も涙もない冷血だって…はっ…俺のことをっ!…はっ…くっ!!」
何かを思い出すように言ったあと、突然かかしの呼吸が荒くなり、しゃがみこんだ。
過呼吸起こしてる!
自分より大きいかかしを必死で支えて、頬に手をあてた。
「かかし!落ち着いて。とりあえずゆっくり息しよ?
大丈夫、大丈夫だから!」
必死に私にしがみつきながら、息を荒くしている。
「かかし!かかし目開けて!ちゃんと私をみて?!」
何度かそう伝えるとぎゅっと閉じられていた右目がゆっくりと開かれ、私をとらえた。
「わかる?私ここにいるから。
かかしは安心してゆっくり呼吸したらいいから。
できるよね?ほら、息吸って?で、ゆっくり吐いて…大丈夫。私だけ今は見てて…ほら吸って‥‥吐いて…」
私の合図に合わせてかかしが呼吸を合わせはじめる。
途中、また目をぎゅっと閉じそうになるが
「かかし、私のこと見て。目閉じたらまた不安になるかもしれない。今私のことだけみて、呼吸するの。
ほら、もう不安なんか消えちゃうよ?」
そういってかかしににっこり笑った。