【SPRIGGAN】Rookie hero【男性主人公】
第1章 プロローグ
大都会――東京の夜は、明るい。
月の光さえも遮られて、ネオンや街灯が赤々と燃えるように火を放っている。
――それは彼の居る部屋も例外ではない。
その部屋も、他と同じく煌々と蛍光灯の明かりがついていた。
ゆったりと広く取られた応接室のような部屋には、中年のスーツ姿の男性と、柔らかな良い素地のセーターに身を包んだ青年――優が向かい合うように対峙していた。
暫くの沈黙の後、年配の男性が口を開く。
「エクアドルの南部のクエンカにある、マリア・アウグシリアドラ教会というのを知っているな?」
「……知らねー」
ぶっきらぼうにそう言い放つと、優はソファに深く腰掛ける。
「そこの脇に在るクレスピ神父博物館というのは?」
「……さぁ?」
柔和な笑みを浮かべた男性――山本は、磨き込まれて艶やかな品のよいテーブルに組んだ手を置く。
彼はそのテーブルに自分の顔が映るのを見ると、聴き取れないほどの溜息をついた。
「……では、アトランティス大陸の存在について、重要な資料の載っているオーパーツというのはどうだ?」
「……」
「……どう解釈しても、真剣とは言いがたい態度だな、優」
「言っとくけどな……オレは誰が何と言おうとも、そのミッションには出ないぜ」
「おや、どうしてミッションだとわかったんだ?」
「ミッション以外で、山本さんはオレをこんな時間に呼び付けるのか?! 全く、急に電話で起こされたと思えば部屋から強制連行されて! 気分は売り出し中の新人芸人だぜ」
「今はそんなのが流行ってるのか?」
「……いや、何でもねー。そんなことはどうでもいいさ。――とにかく、オレは帰るからな。教会だかアトランティスだか知らねーけど、オレはその仕事を受ける気はないぜ」