第1章 「夢の中のアイツ」
心臓の男がカイマン、ニカイドウを眺めた後に私を見た。
まずい、話しているところを見られたからこのふたりの仲間と思われたかもしれない。ふたりが招いた魔法使いとのいざこざに巻き込まれるのは勘弁だな、野次馬のひとりとして見物しよう。
私はすたこらとふたりから離れ野次馬に溶け込んだ。
「なあ、ニカイドウ。あいつら魔法使いじゃないか?」
「ホントだな。」
「よし!久々に魔法使い狩りができるぜ!」
なんて呑気な。でもまあカイマンは魔法が効かないし、相手も強そうだけど殺されることはないだろう。
呑気なのは私もだったかと気づいた時には状況は最悪だった。
カイマンが心臓男へ、ニカイドウがNo.1男へ向かっていったと思ったら、あっという間に地面へなぎ倒されていた。カイマンにいたっては、ハンマーが脳天へ直撃だ。
魔法使いのふたりは異常なほど強く、容赦がない。
カイマンが、ニカイドウが、こうもあっけなく殺されるだろうか......?
カッ!! ビシャァァン...........
歪んだホールの不気味さを際立たせるように雷が鳴り響いた。
「あめが降る前に引き上げるぞ。」
心臓男は空を見上げてそう言ったあと、私の方へ顔を向けた。まっすぐ、目が合った。帰る前についでに私を殺そうとでも言うのか?
わからない、目をそらせられない。
ゆっくりと心臓男は顔を正面に戻した。するとゆっくりと心臓男越しにカイマンが這い上がってくるのが見えた。
良かった、カイマンは生きていたんだ。でもダメージは相当のもののようだ..........
カイマンはかろうじて残っている体力で心臓男に噛みついた。