第1章 「夢の中のアイツ」
「ホール」
中央墓地横広場
AM3時30分。
ゾンビが動き出してから3時間と30分がたち夜明けが近づいてきている。
ある程度ゾンビが減っているのだろう、広場へ集まる人の数が増えてきた。
ゾンビとの戦闘中に負った傷を診せに来た人や一時休憩で配膳される夜食を食べに来た人、プレートを交換しに来た人たちで少しにぎわっている。
カイマンとニカイドウは見かけないな...。まだゾンビ退治を続けているんだろう。
そう考えていると、テントの前にいる男たちの会話が聞こえてきた。
「西地区ですげえゾンビの死体が転がってたぜ、見た感じかなり強い奴の仕事だよ。それら全部の死体からプレートが回収されてなかったんだ。だからこんなにもプレートを集められたぜ。」
「そいつはラッキーだったな。かなり強いってことは、カイマンとニカイドウかもな。」
「それは違うと思うなあ。カイマンとニカイドウなら景品の精肉機をゲットするって張り切っていたから、プレートを回収しないはずがないんだ。」
「そうなのか、じゃあ違う誰かか。あいつら並みに強い奴なんてホールにいたか?」
結局だれかわからず、景品よりもパワー自慢に興味のあるやつが今夜のために鍛えては腕試しをしたんだろう、という適当な結論になった。
魔法の実験にされて異形になったことで腕力が増した奴もたまにいるし、ここではありえない話ではない。
「アルマさん、すいません。ちょっと自治会員の手がいっぱいなので、お坊さんと一緒に各休憩所へのカップ麺と水を運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
「わかりました、ちょっと行ってきますね。」
隣に座っている役員の方へ声をかけて席を立った。
ゾンビが徘徊する町でも、お坊さんと一緒なら安心だ。いくつかのカップ麺とペットボトルの水が入った段ボールを積んだ台車を押しながら在庫が少ない休憩所から向かった。どこかでカイマンとニカイドウと先生に会えるかもな。