第7章 NOVE
「そうですね。知っててわざと聞きました。」
真っ黒いコースターを出しながら、黒崎君は静かに答えた。
その答えに戸惑う。
「わざとって・・・みんなが茶化すからなんか居心地悪かったよ。なんで急にそんなこと・・」
「ちょっと腹が立ったんです。」と彼は私の言葉が終るか終らないかのうちに言葉をかぶせた。
きっと、“ちょっと”じゃない。
雪菜は直感でそう思った。
「あたし、なんかした?」
「早瀬さんにじゃないですよ。」
私じゃないとしたら・・・あの場に居たのは・・。
「神代・・・くん?」
「あいつが自分の感覚でいつもモノを言うのは前からですけど、今回はちょっとうっとうしかったんで。」
確かに、”普通に考えたら”と口にした神代君に少し動揺したのを思い出す。
「けど、あたしと黒崎君が本当に付き合ってるなんて最初から思ってなかったと思うよ?たぶん、冗談で・・」
「そう思ってるならなんでウサギをはずしたんですか?」
・・・見られてた。
「それは、ウサギも一緒だって分かったらまたなんか言われるんじゃないかと思って・・・私もちょっと面倒だったから・・・外したの。」
「同じですよ。僕もこれ以上神代が面倒くさいこと言いださないように話題を変えたんです。」
「だからって・・・。」
「まぁ、神代がどう考えているかは別にしても、早瀬さんはすぐに人の言葉に影響をうけるから。」
確かに、黒崎君との関係を考えた自分が居るのは確かだけれど・・・。
なにもかも黒崎君に見透かされているみたいで思わず反論してみる。
「そんなっ、影響なんて受けて・・・」
「マフラー、どうしたんですか?」
・・・・ぐうのねもでない。
マフラーを付けてこなかったのは、明らかに神代君の影響だった。
確かに、行き詰まったときは話題を変えるのが一番かもしれない。
私は黒崎君の問いかけには返事をせず、何事もなかったように、彼の携帯の充電器を彼に返すことにした。