第6章 曖昧なグレーゾーン
黒崎君の車に積んであるシャンプー・・・。
ホテルのものは髪が傷むからと、いつもそれを使ってくれていた。
シャンプーを手にして甘い香水のようなにおいが好きなんだと言っていたのを思い出す。
どうする?恵にだけは言おうか?
いや、でも…
――私は言葉につまった。
「ふふふ、そんな顔しなくても。ほんっとに分かりやすいなぁ。雪菜は。」
「えっ、あの。本当に志水さんとは何もなかったよっ・・。」
しどろもどろの私。
「雪菜は嘘つけない子だから。それはもう分かってるよ。だから、誰かな~って思ったの。」
恵は本当に鋭い。
観察する能力もこの通りだし、
人の相談を受けたりする時も、いつも静かに最後まで話を聞いては、問題をずばりと的確についてくる。
ほんと、ちょっとした名探偵だ。
「あの・・恵、もしかして『誰か』ももうすでに分かってたりする?」
おそるおそる聞いてみる。彼女ならすでに感づいているかもしれない。
その時、ほとんど同時に教室のドアから有香と優子、そして先生が入ってきた。
反射的にそちらを向いた後頭部に帰ってきた返事は、
「そんな聞き方したら、私の知ってる人だっていってるようなものでしょ?大丈夫だよ、誰だとしても私は雪菜の友達なんだから」
恵のその小声は心拍数が上がってしまった心臓を穏やかにさせた。
有香と優子が席に着くと、この話はどちらともなくなかったようになる。
そんな恵の気づかいに、いつか恵にだけは黒崎君のことを相談してみてもいいのかもしれないなんて雪菜は思っていた。