第6章 曖昧なグレーゾーン
授業前にトイレに行くといって出て行った有香と広子を見おくって、ずっと黙ってやりとりを見ていた恵の横に座った。
恵は普段からいつもこんな感じで落ち着いていて、言葉数は少ない。
「志水さんとはなんでもなかったんだね。」ほう杖をついて安心したようにほほ笑む。
「うん、ホント、心配かけちゃってごめん。」
雪菜は恵にもきちんと謝って、床に置いた鞄から教科書を探した。
「じゃあ、雪菜のシャンプーの匂いがいつもと違うのは誰のせいなんだろ。」
ドキ!と胸が脈を打って、瞬時に振り向く。
恵がニヤニヤしている。
雪菜は焦った。
黒崎との関係はもちろん誰にも言ってないのだ。
関係…といってもそれは口で説明するのは難しい。お互いに信頼して、何だって話す事ができるし、心が繋がっていると信じてるから「親友」だって思ってる。
ただ・・・普通「親友」同士ではやらない事をしているのも分かってる。
それ自体には特別な感情はなくて・・・猫がじゃれあっているのと同じような・・ううん。うまく言えないけれどそう…会話して心が届くような…その延長線にあるようなモノ・・。
なんて、どれだけ説明しても、肉体的な関係がある以上、女友達にそれを理解しろと言うのは無理だと分かっていた。
だから、ずっと伏せている。
有香たちには、黒崎君と神代君と私は一緒の時間の授業が多いから仲がいいのだろうという認識で通してきた。