第6章 曖昧なグレーゾーン
「・・・コラ。楽しみじゃないし。っていうか来てもいいって言ってないし。」
「えー!!行くって言ったのに教えてくれたじゃん!」
「いや、僕が言うまで絶対聞いてくるだろうなと思ったから言っただけですよ。」
さすが、黒崎くん。
親友だけあって、私の事をよく分かっているなと感心する。
まだ・・諦めない。
「そういう流れ?」と窺うように雪菜は聞いてみる。
「そういう流れ。」と黒崎に返される。
「そういう話?」とまた聞いてみる。
「そういう話。」とつっかえされる。
きっぱりと返してくるけれども、その言葉には怒りのようなものは混じっていない。
もう少し粘ってみてもよさそうだ。
雪菜は黒崎の様子を見ながら探る。
まだ・・まだ、諦めない。
「でも・・・さ、私お酒飲むの好きだよ?」
「意味分かんないです。」
黒崎君はこっちもみない。
・・・・。
「バーってすごく行ってみたかったんだよね。」
最後の駄目押し、にこっと笑いかけてみた。
・・・はぁ、と深いため息が聞こえた。
「早瀬さん、絶対来るつもりでしょ。」
すでに諦めたような顔つきの黒崎君を見てそこに判決が出た。
諦めた黒崎と、諦めなかった雪菜。
今回は雪菜の勝ちだ。