第5章 水の音
・・・度の入っていない、それが外れて現れるのは、見とれてしまうほどの綺麗で可愛い顔。
この顔を見ただけで恋に落ちてしまう女性がどれだけいるだろう。
こんな顔に微笑まれたら、きっと誰もが夢中になるに違いない。雪菜はそこまで考えてはっとする。
・・・もしかしたら彼は、それを知ってわざと顔が分からなくなるようにあの眼鏡をかけているのかもしれない。
・・・なんて。。。
ふわりと、彼が微笑んだ。
金髪の髪が目にかかる・・・優しそうな笑みは私を捉えてはなさい。
そして、私は知ってる・・
そんな顔とは不釣り合いの、普段とは別の彼。
「こんなおいしそうなものがあんな格好して男に会いに行くんだから、何かしら傷ついて帰ってくるのなんてフツーに分かりますよね」
いつもよりもずっと低いテノールの声。
天使のような頬笑みなのに、言葉や眼の中には黒いモノが宿ってる。
・・・・かっこう?
・・ふく・・のこと?
ドウシテコノフクヲエランダノ・・・?
と頭の中を何かがちらとかすめるけれど、捉えられないままそれは消えてしまった。
華奢な手がくいと私の顎を持ち上げる。
「シタ、出して。」
冷たい、命令口調。
こうなってしまうと雪菜は逆らえない。
綺麗な顔とのギャップに私はうろたえる。
あまりの恥ずかしさで、目を合わせているのに耐えきれなくなり逸らすと、ぐっと顎を抑えられた。
観念して、口をあけて遠慮がちに舌を突き出してみる。
「ダメ。ちゃんと俺の目見て。」