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メメント・モリ

第1章 翼の生えた男と私の願い


あぁ・・・またこの夢だ。


物ごころついたときからよく見るこの夢。


何のきっかけで見るのかは分からないけれど、1年に1回くらいのペースで見ている気がする。


空から降りてくる羽の生えた男の人。

目が覚めてから、顔を思い出そうとするのだけれど、いつも真っ黒いスーツだけしか思い出せない。

顔はモザイクがかかったようにぽっかりと抜けてしまっていた。




雪菜は空を見上げる。

さっきまでの夢と同じ、真っ青の空。



今度は夢じゃない。


現実の世界だ。





そして・・・夢のあとはいつも考えてしまう・・・。






事実、人は生まれたときから終わりを持っている訳でしょう。

いつだって終わってしまうそのことを、常に考えていることはできないけど・・・


今、終わったらどうだろう。



生きた意味はあったのだろうか?


恋愛でもすれば少しは満たされるものだろうが、心の底から人を好きになれたこともない。



この手にはなにがある?


・・何もないこの手は・・・宙を仰ぐ。


命はさらさらと今にもこぼれて落ちているのに・・・


お金なんていらない。

モノだってこの手には必要ない。



冷たくたってかまわない。



繋ぐ手がずっと・・


私の求めた人の手が・・・


ずっとずっと。。



ずっとずっとずっと。。。




欲しくてたまらないんだ。




でも、そんなに簡単な願いじゃない。


私にはまだ、手を繋ぎたい人すらいない。



今はただ、無我夢中で手を伸ばしてる。


空の星に手を伸ばし続けるように、まだ見ぬ、もしかしたら居ないかもしれない・・・願いに向けて・・・


そして時々、その一人ぼっちで寂しい世界から抜け出せなくなりそうになるんだ。


・・・そう、そんな時には誰かの想いを借してもらいながら・・・。

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