第5章 水の音
呼び出していますというアナウンスの後、音楽が流れる前にぷつっと繋がった音。
「・・・今どこですか?」
いつもの黒崎君の声だった。
その声を聞いて安心すると同時にこのまま甘えてもいいか、躊躇する。
さっき聞いたばかりの志水さんの軽蔑したような目と声が胸をぎゅうっと握りつぶそうとしてくる。
セフレ・・?
・・そういうのじゃ・・ない。
でも・・本当のところなんて分からない。
パシャパシャと黒崎君との色々な景色がフラッシュバックして戸惑う・・・
雪菜は携帯を持ったまま立ち尽くしていた。
けれど次の瞬間、
「どこにいるか、って聞いてます」
静かだけれど強い口調。
その声に迷いは吹っ切れた。
「・・・家の近くのコンビニ・・」
言い終わるか言わないかのうちに、
「15分で行きます。」と聞こえて電話は切れた。