第11章 束縛
黒崎君が、後ろから手を回す。
大きなクマのぬいぐるみを抱っこするかのようにして私の事を包み込む。
首筋にキスを落として耳元で囁いた。
「早瀬さん、いいにおいがする。」
そんな風に彼にされても雪菜は嫌じゃなかった。
いつからだろう・・・
初めてであった日の事は忘れてしまったけれど、
まるで猫みたいに、
気がつけば私の心の隙間に静かに入ってきて、彼は居座っていた。
自分でも信じられないほど、男だとか女だとかそういうことを一切感じさせないまま身体の距離も、自然と0距離になって・・・
・・・・不思議な人。
黒崎君も神代君と同様、人として好きだった。
―――ふと、思う。
そもそも、人として好きってなんだろう。
恋愛対象のLOVEと友情のLIKE。
その境界線はあるのだろうか?
「黒崎君はさ、私のこと人として好き?」
「満月の日に狼にでもなるの?」
「・・・そうじゃなくて。」
「僕は誰のことも好きじゃないよ。」
くすくすと耳元で笑うからくすぐったい。
「それって私のことも嫌い、ってこと?」
好きじゃないと言われたのがなんだか寂しくて聞き返す。
「早瀬さんは、大切な人」
ため息が出た。
やっぱり、黒崎君の感覚だと別物になってしまう。