転生したけど、モブキャラだから彼の観察日記をつけています!
第2章 どこかへ行きたい
「メキシコ行くのか?」
旅行のパンフレットを見つめたままの アユムの手元を覗き込みながら、優は何気なく聞く。
「え?!あ、いや…いきたいなーって思っただけで」
アユムはそう言うと顔を上げ、いやいやと手を振った。
そう、行きたい。
旅行は好きだ。
中でも遺跡はとても好きだ。
だけど、正直先立つものと時間がない…。
アーカムで働いているとはいえ、まだ新人。
さほどの給料がもらえているわけではないし、何より休みが無い。
「パレンケに行きたいのか?」
「え、あーうん」
以前…今の人生よりも前の記憶で、メキシコには行った。
スプリガン、御神苗優に憧れ、行こうと思い続けて十数年。
社会人10年目の記念に、ようやく一人で訪れた。
だが、肝心の…物語の舞台となったパレンケには行けていないのだ。
「でも、やっぱ無理かなあ」
そう言うと、 アユムは苦笑しながらパンフレットを閉じた。
パレンケはメキシコの遺跡としては最メジャーではない為ツアーも少ない。
だから結構な時間と、費用がかかる。