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アイナナ短編集

第4章 十龍之介


…in龍之介の家
亜衣と龍之介は二人で龍之介の出た映画を見ていた。
その映画は龍之介とヒロインとのラブストーリーだった。
(やっぱり龍之介さんカッコいいなぁ…でも…なんかモヤモヤするなぁ…。)
亜衣は龍之介に座ったままバックハグされながら一人でそう思っていた。
龍之介は亜衣の反応がないことを気にしてこう話しかけてきた。
「なんか変なところあった?なんか難しい顔してるけど…。」
「いえいえいえいえ、なんでも無いです。」
「本当に?」
亜衣が龍之介の方を見ると、龍之介は真剣な眼差しで亜衣の顔を覗き込んでいた。
(うっ…私龍之介さんのこの顔に弱いんだよね…。)
亜衣は意を決して話し始めた。
「実は…なんか胸が苦しいと思って…。」
「具合でも悪いの?」
「いや、そうじゃなくて…この映画の龍之介さんを見てると…なんていうかこう…胸がモヤモヤします…」
「映画のどのシーン?」
「龍之介さんとヒロインの恋が成就するあたりからですね…。」
「それって、嫉妬…してくれたってことで…良いのかな?」
「うっ…確かにそうだと思うんですけど…」
「けど?」
「アイドルの恋人になる時点でこうなることは予想がついてて…割り切ろうと思ってたんですけど…いざ目の前にするとやっぱり割り切れなくて…こんなんじゃアイドルの恋人失格ですよね…。」
「どうして?俺は嬉しいよ?亜衣ちゃんに嫉妬してもらえて。俺はいつも亜衣ちゃんがアイナナの子たちと仲が良いところを見るたびに、亜衣ちゃんは俺の恋人なのに…って嫉妬していたから…。」
「え…。」
亜衣は驚いて後ろを振り返って龍之介を見上げると龍之介の顔は真っ赤に染まっていた。
(龍之介さんがそんなふうに思ってたなんて…)
亜衣は龍之介の言葉に頬を赤く染めてこういった。
「嬉しいです…私ばっかり嫉妬してると思ってました…。」
「そんなことないってわかったでしょ?…じゃあ…」
龍之介は亜衣の脇の下と膝の裏に手を入れて持ち上げた。
「きゃ…急にどうしたんですか?」
「君が欲しくなった。…ダメ…かな?」
(そんなこと言われたら断れない…)
亜衣は顔を真っ赤にして頷いた。


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