第18章 信頼の絆
「竈門炭治郎 様」
炭治郎を真っ直ぐに見つめ、凛とした声で呼びかける。
「この度は、私(わたくし)の仇討ちにご助勢頂きまして、誠に感謝の念に耐えません。
このご恩は一生忘れません。
本当にありがとうございました。」
布団に手を付き、深々と頭を下げる勇姫。
炭治郎は目の前で礼をとるこの少女のことを、心底愛しいと思った。うち震える心を落ち着かせ、己も背筋を伸ばし、呼吸を整えて居住まいを正した。
礼には礼で応えようと思った。
「巽勇姫 様」
呼ばれて勇姫は顔を上げる。
「この度の悲願成就、心よりお祝い申し上げます。
また、その瞬間に立ち会えましたことを大変嬉しく思います。私の方こそ、感謝申し上げます。」
炭治郎は腿に手を置いたまま、深く一礼した。
「つきましては…」
頭を下げたまま、炭治郎はちらりと上目遣いで勇姫を見る。
「ん?」と首を傾げる勇姫だが、次の瞬間、炭治郎に抱きしめられた。「…え?」と目を丸くして驚く。
「つきましては、貴女は先程“一生”という言葉をおっしゃいました。」
耳元で炭治郎の声がする。
「ですから、一生、私の側にいて頂きたいと存じます。」
炭治郎の腕の力が強まる。
「私の、妻になってください。」
………
………………
沈黙。
………え?
え、ちょっと待って、嘘だろ?
渾身の求婚がまさかの展開になり、焦る炭治郎。無反応とはこれいかに。
「えっ…と、あの……、勇姫…さん?」
冷や汗を流しながら恐る恐る肩口の勇姫を見る。
勇姫は音も立てずに大粒の涙を流していた。
途端に勇姫からズザザザと飛び退く炭治郎。
「ごごごごごめん、勇姫!嫌だったか?
あ、あの、俺、いや、…なんて言うか、なんかその、ごめんっ!」
――…え?俺、何か間違えた?なんでこんなに泣くんだ?俺が泣かせたのか、これ?
恋愛初心者の炭治郎は激しく動揺して、自分史上最大級に取り乱した。