第1章 序
勇姫の記憶
近所の人たちに助けられ、叔母の胸の中で勇姫はようやく涙を流すことが出来た。
一度流れ出した涙はなかなか止まることなく、布団の中から出られない日々が半年程続いた。
しかし、叔母たちは優しく見守ってくれた。
家族を失った絶望の中で、勇姫が皆の後を追わずに済んだのは、夜の星空と左手の傷だった。
悲しみの象徴であるその傷は、勇姫の生きる目的となった。
自分の家族の仇をとる、という目標である。
「絶対に、この手で、葬る。」
自分の家族が、あの優しい人達がそんな事を望むはず無いとわかっている。
けれど、それしか生きる理由がなかった。
星空の下で何度も何度も自分に誓った。
叔父が道場の師範だった為、そこで剣術を習った。手の皮も足の皮もめくれた。治る前にまためくれた。
それでも、周りがその気迫に圧倒されるほど、勇姫はがむしゃらに努力した。
そして、数年の内でどんどん強くなっていった。
ある夜、勇姫は外出時に鬼と遭遇し、鬼殺隊士を育てる育手だという人に助けられて、弟子にしてもらうことにした。
家を出ると告げると、叔父は勇姫を道場の後継にしようとしていたので酷く残念がり、叔母は純粋に別れを悲しんだ。
「いつでも戻っておいでね」
叔母の言葉と叔父の優しい眼差しに、「お世話になりました。このご恩は一生忘れません。」と深々とお辞儀をした。
勇姫に声をかけた育手は、「星の呼吸」の使い手だった。
日輪刀を持たずに鬼から人を庇い戦う勇姫の姿を見て、数年振りに弟子を取る決意をした。
勇姫は2年程修行をし、星の呼吸を習得した。
そして選別を終え、日輪刀も届いて旅立ちの日が来た。
師匠は、
「いいな、勇姫。星の呼吸と共に、もう一つのお前の呼吸…どちらも鍛錬して極めろ。
そして、お前の願いを果たせ。お前なら出来る。
…絶対に死ぬな。」
そう言って、無骨な両腕で勇姫を抱きしめてくれた。
「ありがとうございます。いってきます!」
と頭を下げ、勇姫は元気に家を出た。
さあ、鬼退治だ。
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設定となるものを、軽くさらーっと書き連ねました。
ここからが夢ですね(*^^*)