第4章 T.03
「そういうことだ!選ばれちゃったもんは仕方ねぇ、諦めろ!」
「諦めろって言ったって…」
そりゃあもう戸惑うよ。
戸惑わない人がいたら問いかかりたいね!どうして戸惑わないか!
眉を歪ませ、口を尖らせていると、神様がずいっとこちらに近づいた。
びっくりして、思わず足がすくむ。
「でもお前、この世界も悪くないって思ってるだろ?」
耳元で囁くような、頭に響くよな声。
さっきとは雰囲気がまるで違う。
背中にぞわりと嫌な物が伝う様な感触。
「そ、そんなこと…ないよ。私は……元の世界に戻ら、ないと」
よくわからない自分自身の気持ちに負け、だんだん声が小さくなってゆく。
そう。いつまでもここにいるわけにはいかない。
イギリスに迷惑をかけてしまうし、元の世界にやり残したことだってある。
そうだよ。
そうなんだよ。
自分にしっかりと言い聞かせる。
「相変わらずー…素直じゃないんだな。いいよ、お前はお前のままでいれば」
初めとも、さっきとも違う、寂しそうな、そんな声で神様は私に言った。
「じゃっ、そろそろ帰らないと!たまにお前の夢に遊びに来るからな!来たときは、お茶とお菓子よろしく☆」
神様はさっきの声色は嘘じゃないかというくらい、雰囲気をガラリと変え初めのテンションで言った。
「え、ちょっ、まっ!」
「お?ちょうどお前もお迎えが来たみたいじゃん?」
帰ろうとする神様を呼び戻そうとすると、上の方から声が聞こえた。
『……ーい!……きろ……!』
『……由真…!起き……』
「ほら、早く起きてやれよな」