第4章 T.03
「つかさあ、そんな騒ぐほど楽しかったのか?馬車が?ドレスが?レンガが?」
疑問そうに首を傾げながら私が反応していた単語をポンポンあげる。
…記憶力いいな、イギリス。
「うん。どれにしろ、私の住んでいた世界にはなかったからね!ロマンっていうかなんていうか!」
「はあ、そういうもんなのか」
わっかんねーなー、と髪をガシガシするイギリスを見て、ついクスクスと笑ってしまった。
「……なに笑ってんだよ」
不機嫌そうな顔が、こちらを見る。
さすがに『萌えてました!』なんて言えないから適当に嘘をつく。
「いやあ…イギリスって髪ボサボサだなーっと思って!」
「はあ!?なんだよお前いきなり!」
「何ってー?事実を言っただけだよっ」
ふふん、と挑発するように、得意げにイギリスを見つめる。
「ってめぇ、なに髭野郎みたいな事言ってんだよばかぁ!由真なんかこうだっ!!」
「わっ、ばっか!髪の毛ぐちゃぐちゃにすんな!このくそっやり返してやる!」
「やりやがったなコイツ!ふふ…いいさ!大英帝国様の真の力を見せてやる!!」
「ぎゃああああっ!!」
お互いに手を伸ばして、お互いの髪をできる限りぐちゃぐちゃにしてやった。
馬鹿げてるって言ったらそうかもしれないけれど、これも一つの私の思い出だ。
忘れたくない、記憶の一欠片。
「あははははっイギリス髪の毛もっさもさー!」
「由真も負けず劣らずだぞ、はははっ!」