第2章 T.01
つい、目線を下げた。
なんともいえない感情で胸がいっぱいになる。
今は戦争中なんだ。日本とイギリスは敵同士なんだ。
「…そうですよね」
小さく開いた口からはこんな力のない言葉しか出ない。
疑うのも、なにもかも普通なんだ。
それをとても悲しく感じた。こんな感情だって、平和ボケしていたからこその想いかもしれないな、なんて自傷してみる。自傷したところで何もない。何も得ないし、何も失うことはない。
悔しいなんてそんな薄っぺらい感情じゃなくて、とても苦い塊のようなもの。
私は相変わらず足元しか見れない。顔を上げられない。縮こまっていなくなってしまいそうな気分だ。
「戦争中、なんですよね。そうだったら……当たり前なんですよね」
必死で歪んでいた顔を緩めて、顔を上げイギリスを見ながら自分に言い聞かせるように言った。
ああ、こんなこと言ってどうするんだろう。
とてもとても微笑めていないで見たイギリスの顔は驚いているように見えた。
「…なんだよ、それ」