第17章 弱い心を断ち切る
広い兵舎はそれぞれのランクに応じてフロアが決まっている。
分隊長のエルヴィンは兵舎の中でも団長に次ぐ地位で班長のハンジたちより1階上のフロアだ。
何度も呼び出された際には気にも止めずにいたが、今は遠くて近づく度に鼓動が早くなる。
「ティアナちょっと深呼吸しよっか」
足を止めハンジの言う通りに深呼吸を繰り返す。
「大丈夫だよ、心配しなくていい。もし嫌なら行かなくてもいいんだ」
深呼吸で少しだけ落ち着いたティアナは真っ直ぐにハンジの目を見て答える。
「行きます」
ティアナの顔が引き締まったのを確認してハンジは再度歩みを進めた。
ノックの後、エルヴィンからの「入れ」と答えの後にハンジはドアを開け、ティアナから入室させる。
既にトリシャ達は執務室におり、手は縄で縛られ昨日の威勢はどこへいったのか皆、項垂れている。
エルヴィンは厳かに始めた。
「さて、作成した聴取の確認だ。まずはトリシャ。君はティアナに対して悪質な噂を流し、部屋に押しかけ暴行した。間違いないか?」
憎しみを滲ませた顔でトリシャは認めた。
「アベリア、カタリナ。君たちも噂を積極的に流して誹謗中傷につとめた。異論はあるか?」
2人は蚊の鳴くような声で「いいえ」と答えた。
「もう少し続くぞ。大丈夫か、ティアナ」
「大丈夫です。ミケ班長」
淡々とした調子でエルヴィンは続けていくなかティアナはこの集まりにリヴァイがいることが不思議だった。彼は助けただけだ。
ティアナがリヴァイに目を向けるとリヴァイの三白眼もティアナをチラリと見ていた。
「では、次だ。トリシャ、アベリア、カタリナ。君たちはティアナを意図的に襲わせる為に男性兵士のリディク、ヤイマを唆したか?」
「唆してはいません」
「トリシャ!てめぇっ!」殴りかかろうとするヤイマの高く挙げられた腕をリヴァイが掴んだ。ヤイマは顔を歪ませ呻いている。
「話が進まねえじゃねえか。腕一本くらい、いっとくか?」
半ば本気のリヴァイが握ったヤイマの腕はプルプルとしている「やめろ。それこそ話も何もないだろう」
何とかミケがヤイマとリヴァイを引き離した。
「ではリディク、君はどうだ?」
「女たちがティアナは遊びが好きだと話してて、何処でどうしてるとかは言ってきました」