第15章 悪意
ティアナの変化に皆が気づいて、なんとかしたいと気を揉んでいた日々のなか、兵士たちに届く手紙が配られた。
皆は家族や恋人、親しい人からの知らせに我先にと手紙を受取る。
リヴァイはそれをなんとなしにみていると大人しく順番を守り何通か受取っているティアナを見つけた。
自分には誰からもこない便り。
別段気になることはないがティアナが差出人を確認した笑顔は最近見ることのないものだった。
それが嫌だ。その笑顔は誰に向けられているのか。
知りたくて、知りたくない。
「おい、随分と嬉しそうだな。」
「そうかな。」
「だらしねえ顔してんぞ」
「ごめん、早く部屋に戻りたいからまたね。」
まただ。スルリと躱して直ぐに逃げやがる。
クソ女。
部屋に戻ったティアナはまず、ペーパーナイフで封を切る、手触りのいい封筒から。
恩人からの近況報告と過保護なくらいの言葉が綴られたまには顔を見せなさい、いつでも帰って来るようにと締めくくられる手紙。
もう一通は普段使いの封筒の1枚の便箋。困ったことはないか、入り用なものは無いか?これまた先程と同じ言葉で思わず笑ってしまった。
そして次に思ったのは懐かしさと安心感。
ここのところ弱ってた心に染み渡る優しい言葉たち。
だが、最後の一文に驚きと動揺が走った。
近いうちに会って話し合いをしなければいけない。
そしてどうか、そんなことはしないで欲しいと説得したい。
釘を刺さなくておかないと。
エルヴィンは届けられた思いがけない提案の手紙に安堵した。
もしかしたら…何度もやり合った事がすんなりと解決するかも知れない。
しっかりと根回しをして来たるべき日に備え、逃れられないよう、気づかれないように元の世界へ戻っていくように一計を案じよう。
エルヴィンは穏やかに目を細めた。
「君は戻るべきだ。」
ティアナに思いがけない事態が用意され始めガードが手薄になってるうちに悪意は加速してティアナを待ち構えていた。
悪意が破裂するまで、もう少し。