第47章 動き出す過去※
具体的な作戦をエルヴィンは知らせなかった。
リヴァイや事情を知ったハンジからの反発は強かったが一つだけ指示を出した。ほんの少しの間ティアナから目を離した振りをすること。もちろんその間も知られないようにする。
べったりと張り付くと相手方がティアナに近づけないのとこちらの手の内を晒してしまう。
ハンジはともかくリヴァイは断固拒否したがなんとか説得し危険だと判断した時は動いていいと条件をつけた。
ハンジは笑いながら「リヴァイにはあまり効果はないと思うけど?」と茶化したがリヴァイにもティアナが本当の意味で解放されるのを願っている。
そうそう不用意な動きはしないとこればかりは信じるしかない。
できることならティアナには侯爵の庇護の元でひっそりと過ごして欲しかったとも思っていた時期もある。叶わないならローゼ内で安全な場所を用意しそこで目立たずに生きて欲しかった。
さほど権力は持ち合わせていないが女性一人をうまく隠して置くこと位はできる。
しかし自分は調査兵団団長であり、その為なら手段を選ばずに兵団の利を選択する。
それが志し半ばで散った仲間への弔いの一つだと信じている。その自分が私情に流されるわけにはいかない。
時折リヴァイに羨ましく妬ましい感情を抱く自分を浅ましく自虐的でお門違いな感情を抱いてしまう。
自分には許されない思いをはっきりと態度で、言葉で示す。その彼が仲間を決して軽んじてるわけではない。と知っていても……
ならば自分にできることは彼女を矢面に晒しながらも危機を避け守る為に策を練ることしかできることしかない。
リヴァイはハンジにすべてを話し、ハンジも協力は惜しまないとエリーの目をかいくぐり伝えてきた。
表向きの準備は整っている。
相手がどう出たとしても対抗する手段も考え尽くし、強力な後ろ盾も得られた。
後はその夜を待つ。
きっとティアナにとって傷つく。
望めるなら傷が最も浅いよう願うばかりだ。
※※※
リヴァイは荒れていた。
もし不測の事態が起こったら自分を制御できるか自信はない。
エルヴィンも夜会での振る舞いについて詳しく言わねぇ。策がないとは考えにくいがどうして俺達にまで隠す必要がある?
もし、仮に、万が一、考えれば考える程眠る気も起きない。
ティアナに会いたい。今すぐ会いたい。
隣の壁が隔てる距離が遠く感じた。
