第8章 壁外調査
リヴァイ達にとって来て欲しくなかった壁外調査の日がきた。
兵士達も勇ましさと恐れの間で揺らいでいたが、当日は静かに迎えた。
ファーラン、イザベルと壁外調査に向かうことについて言い争っていたリヴァイも仲間を信じ、無事に壁内へ戻る決意を胸にしていた。
「俺がアイツらを守る。必ず。」
巨人の領地へ続く開閉門に兵士達が整然と陣を組む。
ここにくる途中、見物客のように集まっている人々からは期待を寄せる顔、ヒソヒソと帰りを予想する顔と声がある。
「人類は!また一歩を踏み出す!!前進せよ!!」
キースが飛ばす檄に応えるように馬の手綱が握られ、走り出す。
「すっげぇ!!」
「ああ、悪くねぇ」
「最悪だぜ、誰か嘘といってくれ………」
壁を抜け、広がる大地と光にリヴァイは目を開き呟き、イザベルは無邪気に風を感じる。ファーランは顔を強ばらせつつも並走する。
イザベルの壁外での興奮をきっかけにサイラムは突っつかる。
フラゴンがサイラムを諌めつつ、班員に気を抜くな。訓練と実践は違う。とリヴァイを見て忠告する。
しばらく走ると巨人が勢いよく近づいてくる。
複数の兵士で機動力を奪おうとくるぶしにアンカーを飛ばし斬り掛かる…が動きが速い巨人の足になかなか取付けない。
注意を引こうと回り込んだ兵士が巨人の手に捕まれ、絶叫する仲間を助ける為に別の兵士らが腕から切り落とそうとする、が不意に顔をくるりと向けた巨人の口が開かれ、大きすぎる手に握られた兵士の体も不自然な姿になり果てた。
それでも向かっていく兵士の動きを一挙一動をリヴァイは見ていた。
フラゴンがサイラムに着いてこいと指示を出し巨人に向かう。
「サイラム!俺に続けっ!」「はいっ!」
速度をあげるフラゴンらにリヴァイが追いつき、フラゴンとサイラムが咎めようと声を掛けるのに被せて言い放つ。
「お前ら、壁外は甘くねぇと言ってたな。腑抜けなやり方してんじゃねぇよ。ファーラン、イザベル!行くぞ!」
「おう!!」
三人はフラゴン達を追い抜き、息のあった連携を見せ、膝を削ぎリヴァイが項を切り落す。
一瞬の動きで巨人が崩れ落ちていく様にフラゴンは呆然とする。
その様子を中央から下がって見ていたエルヴィンはリヴァイの翼は本物だと、期待にあふれた笑みを浮かべた。