第7章 演技と本音
イザベルとティアナを宿舎へ送り、ファーランも部屋へ帰る道すがら、壁外調査について話す兵士達の様子とティアナのあの視線が壁外調査で新兵の死亡率が脅しではない。と伝えていた。
こちらの作戦の鍵だったティアナは結局何の手掛かりにならなかった。
リヴァイも手こずっているようだ。
文書を盗るだけなのに、中々うまくは行かない。
他の手立てはないか?
本当にティアナはそれだけしか利用価値はないのだろうか?
とにかくリヴァイと話してみなくちゃならない。
リヴァイは先にハンジの執務室から戻っていた。
ファーランはティアナについてエルヴィンの女でもなく、本人曰く信用されていない上に退団を促されているだけと話し、リヴァイは如何にハンジという人間が汚部屋の住人であるかを話した。
つまりは手掛かりは掴めていない。
時間がたてば経つほど、不利になる。
ロヴォフからは早急に。と言われている。
早く目的を果たさなければ壁外調査へ向かう事になる。
「なぁ、リヴァイ。」
「………」
「ティアナなんだけどさ、何だかんだ言ってもエルヴィン達と接点がある。それを利用したい。」
「あの女はエルヴィンに追い出し食らうってだけだろう?」
「そうなんだけど、あの男ならティアナを追い出すの簡単だと思わねぇ?なのに追い出しちゃいない。」
「何が言いたい。」
「ティアナに、もっと踏み込んで昼間も友達ごっこしようってこと。」
「あ?利用価値ねえだろ。」
「ティアナを辿って幹部の方々に堂々と近づくのさ」
「近づいても警戒されてるんだ、意味ねぇよ。」
「だからこその、お友達ごっこ。少しでも油断させて穴を作るんだ。」
「ふざけるな。俺はアイツらと馴れ合う気はねえぞ。」
「ははっ!リヴァイにそんなの求めてないよ!張り付くのはイザベルと俺でやるよ。」
笑いながら、これからの方針として、ティアナとその周囲と解け込む事、リヴァイはこれまで通りで方針を固める。
もし、失敗した時はロヴォフの条件の王都ではなくとも逃げて、ほとぼりが覚めるまでマリアかローゼで暮らして行けばいい。
地下で生き延びたのだから地上で隠れて生きるのもできるはず。