第34章 再び異動と甘すぎる夜
それからの日々は大きな問題もなく、訓練と訓練の毎日を過ごしている。
変わったことは歌う時間は短く、リヴァイとの時間が多くなったこと。
意外とスキンシップが好きらしい彼は私の髪を梳いたり、その日の出来事をお互いに話したりする。
夜のお散歩は見廻りが少なくなったのでほぼ毎日リヴァイに会うことが夜の楽しみになっていた。
仏頂面、無表情、表情筋が死んでる。とハンジさんは言うけれど彼はきっと目で語るのだ。
ほんの少しの変化だけど嬉しい時は目を細めて、不機嫌な時は鋭い目で。
「おい、何とかならねえのか」
「だって、共同生活だよ?」
「それでもだ。ティアナは無防備過ぎる。こっちの身にもなれ。」
拗ねてしまったリヴァイに思わず小声で笑ってしまうとより一層不機嫌になってしまう。
リヴァイだって女の子に囲まれたりして私だって面白くない時もある。そう言うと不意打ちに抱きしめてくれる。
そんな風に私達は大切な時を共有していた。
春が訪れ花々が咲き誇り、若葉の芽吹く時期になると壁外調査の準備が始まる。
リヴァイは「死ぬな。どんな時でも生きることを諦めるな、俺を置いていくな。」と不安そうに瞳を揺らす。
そして二人の温もりを確認するように抱きしめ合う。
絶対と約束出来ない。それが分かっているからいつも返事が一瞬だけ遅くなる。
「聞いてんのか、ティアナは全部俺のだ。俺はお前を守る。」
リヴァイは掠れた声で何度も私に言い聞かせる。
私はただ頷き、抱き締め言葉には出来ない不安を分かち合う。
私の予想よりも早くに壁外調査の日程がキース団長から告げられた。
珍しく私はキース団長に呼び出しを受け、ほとんど入ったことのない広く資料も多い部屋へ通される。
幹部を纏め、兵を纏める団長は随分と顔色が悪い。
「今回の壁外調査は長距離索敵陣形とエルヴィン分隊長発案の陣形で行われる。」
「エルヴィンのよく練られた陣形だ。しかし初めての陣形でもある。君には臨時で経験のある医療隊に入ってもらう。」
「…拝命致しかねます。私は前線を希望しております。」
「これは決定事項だ。下がれ。」
団長に否と伝えたところでどうにもならない事は知っている。
それでも言わずにはいられなかった。