第5章 きっかけは手掛かり
ファーランがティアナを探っている頃、リヴァイはほかの二人の執務室を当たっていた。
もしティアナから情報が引き出せなかった時の為だ。
打てる手は打っておく。それが二人の一致した作戦だ。敢えてイザベルには何も言わない。
今のところ、リヴァイもファーランも成果はない。
壁外調査が近々行われると噂になっている。新米が巨人に多く食われると聞いた。
訓練は厳しくなり、兵士達の雰囲気はピリついているのを肌でも感じる。
その証拠に以前は地下あがりと嘲笑ってた奴らも、そんな余裕はもうないらしい。
壁外調査がくる前に、すべてを片付けてファーラン、イザベルと早く王都に向かいたい。
巨人なんぞに怖気付いたりしないが、二人のことが心配で不安になる。
地下では三人で上手くやってきた。
だが、それは地下での話で、もし巨人が二人を傷つけたら?
万が一のことがあったら?
ぐるぐると回る想像を止めようとするが止まらない。
(ファーラン達がティアナとかいう女から上手く情報を引き出せればいいが…
ファーランは人の懐に入るのが得意だし、イザベルは警戒される要素はない。)
リヴァイは今夜もおぞましいハンジの執務室に潜り込んで探索する。こんな混沌とした部屋で、あの巨人女はどこに何があるのか、把握しているのか?
掃除をしたくて堪らないが、なるべく物を動かさずに我慢して一生かかりそうな探索し続ける。
今夜もティアナは一人きりのステージで切ない歌や、テンポの速い歌を披露していた。
ティアナの行動時間は決まった時間に来ては、決まった時間に帰っていく。
ファーランとイザベルは何気ない振りをしてティアナ専用ステージへ。
勿論、偶然を装う為、普段通りに話して近づく。
イザベルの陽気な話し声が聞こえたらしい。
途端にティアナは歌うことを止め、自分達の方へ顔を向けた。
ファーランは驚いた振りをして、イザベルは大きな瞳を更に見開いて、ティアナへと足を進める。
ファーランは驚いた顔からニコリと微笑み、イザベルも無邪気に話しかけた。
「ちょっと散歩してたら綺麗な声が聞こえてきたからさ。つい。」
「なぁ、今のってあんたが歌ってたのかよ〜!すげえなぁ!」
その言葉に観客の居ないステージに思わぬ観客にティアナは動揺していた。