第5章 きっかけは手掛かり
何度もエルヴィンの執務室から出てくる女性兵士が、何らかの手掛かりになると踏んだファーランとイザベルで、その女性兵士に接触を図る。
「もしかしたら、エルヴィンの女かもしれないし、文書の在り処もわかるかも。」
「その可能性にかける価値は?」
「必ず手掛かりを掴んでみせるさ。」
ファーランはパチンとウィンクをしてみせる。
それからは、気づかれない程度に女性兵士を観察する。
やはり、エルヴィンの執務室に何度か出入りしている。
ファーランは日頃から兵士達とコミュニケーションを取るようにしていたので、女性兵士について調べるのも容易かった。
名前はティアナ・ディーツ
843年に調査兵団入団。93期生。
地味だが、誰に対しても笑顔で、その周りには人が絶えない。
だが、彼女には1つだけ妙なところがある。
夜、決まった時間に宿舎から何処かへ向かうこと。
「逢い引きかぁ……?」
尾行してみると林の中の訓練用具をしまう小屋だった。
そこにはティアナしかいない。
ファーランは奇妙に思い、これから誰か来るかも、と隠れて様子を伺う。
するとティアナは手をほんの少し横に広げ歌い始めた。
ファーランは歌に興味はないし、地下の酒場でも歌は何度もきいた。
だがティアナの歌は時に高く、低く澄んだメロディーでファーランの胸をうった。
多分、ティアナが毎夜ここへ来ているのは、誰にも邪魔されずに、ただ歌う為なのだろう。
女一人で不用心だな、と心の中で苦笑する。
如何に警戒されずにティアナに近づけるか?
日中はいつも誰かしら側にいるティアナ。
だが、夜は一人。
この好機は逃がせない。
俺とイザベルの二人で偶然をよそおって近づく。
気が済んだのか歌い終わり宿舎へ戻るティアナの背中を見てファーランは小さく笑った。
その後リヴァイにティアナの様子を話し、先に決めた分担を確認する。
ファーランとイザベルはティアナを。
リヴァイは無理のない範囲で夜は研究室に籠るハンジの執務室、自室に戻るミケの執務室を探索する事で作戦をたてた。