第26章 過去話
それでも、俺は諦められなかった。
自由を求め、巨人の謎に迫ろうと日々の厳しい訓練の毎日と壁外調査に出ると多数の死傷者を出す。
それも人として見てられない死も多い。
王都やシーナで貴族すら虜にし綺麗なものに囲まれた彼女が生きていけるとは思えなかった。
いや、最初にアーリヤとして会っていた時から不思議に思っていた。
驕ること無く調査兵団と言えばどこかおかしい変人共と嘲笑もせず、訪れれば歓待し調査兵団の良き理解者でありスポンサーであり接待すべき女性。
いや、本音を強いて言うならば惹かれていた。彼女の存在そのものが俺にとって美しく無垢な守りたい女性。
それなのに。彼女はここに来た。死に最も近く、地獄をみるここに。あの頃のように着飾ることはなくなったが、変わらず無垢のまま。
寝よう。このまま記憶に流されては朝は直ぐに来て訓練に支障をきたす。
俺が今望むのはエドゥアルド部隊長が彼女を手放なさないことを祈るのみだ。
ティアナとリヴァイはあれから手紙でのやり取りをしていた。いつもと変わらず近況が綴られている手紙の最後に一言。
【今度のお休みが急遽連休になったので本部に顔をだすね、ちゃんと顔を見て話したい事もあるんだ】
リヴァイは表情こそ、いつも通りだが驚きとともにティアナの話したい事に一抹の不安も抱いた。
良いニュースになのか、悪いニュースなのか、皆目見当がつかない。
だが、会える。たかだか一週間も会ってないだけだ。
顔を見て話せる。それだけで心が騒ぐのをリヴァイはなんと言う気持ちなのかも、分からないまま、邪魔してくるだろうハンジをどう追い返そうかと考えながら。
キース団長直々に第3医療隊からの返事を受け取るようハンジは指示を受けた。
そういえばリヴァイにも手紙が届いてた。手紙を受け取るリヴァイはほとんど変わらないが表情が柔らかく写る。
リヴァイが第3医療隊に行った辺りからだ。
多分ティアナからの手紙に違いない。
兵団内でリヴァイが気にかけるのはティアナくらいだ。
ハンジはエルヴィン、リヴァイの二人から恐らく思いを寄せられているだろうティアナの様子も知りたかった。エルヴィンはアーリヤとしてのティアナにか、リヴァイは其の儘のティアナに惹かれているのか面白いと無責任に思った。