第25章 保護者会
「ご子息様はあの子のことは何もご存知ないままですか?」
あまり触れられたくない話ではあるだろうが念の為確認しておきたい。
コーネリウスは目を手元に伏せて小さく息をつく。
「あれには話してはいない。話せば大騒ぎだ」
「では、私どもも話さずに当初の話で合わせてよろしいですね。」
「そうして欲しい。息子はどうしても信じてくれなくてね。君たちにも当時の事を聞いて回っているとは。」
「問題ありません、ディートリッヒ様にとってティアナはファンで妹ですからね。」
「ディートには、もっと大人になってほしいのだが、彼女のことになると、どうも。すまないね」
「どうぞ、お気になさらず。ディートリッヒ様だけではありません。アーリヤを惜しむのは私も同じです」
「ありがとう」
コーネリウスは力なく笑うと次の公演や資金について楽しみにしていること、足りないものは遠慮せず相談して欲しいとクルトに告げ、次の予定があるのか執事が耳打ちすると、それを合図に茶会は終わった。
「エルヴィン、いい加減いいんじゃないの?」
両手を頭の後ろで組んで執務室のソファの真ん中に座るハンジが問いかける。
”何を”と聞かなくてもわかる。
ミケはいつも通りフッと鼻で笑う。
ハンジもミケも危機は去ったと判断した。
確かにもう、あの噂も聞かないと報告も受けている。
事件自体が、壁外調査の後ではなかったようにきれいに話が消えた。
キース団長からも本人の意思確認をして、本部に戻りたいのなら事務官として戻してもいい、と許可は下りている。
ただ、第3医療隊にいきなり預け、いきなり引き取るのは如何なものか?エルヴィン自身も本部に戻したいのと戻したくないのと二律背反する気持ちに揺れていた。
ティアナを…しかし。と。私情だらけの自分にも苦笑しか出ない。
「勝手に預けて勝手に引き取るのか?勝手すぎるだろう。」
「でもさ、こう言っちゃなんだけどティアナには即戦力としての能力はないでしょ?向こうで戦力になるには向こうに居続けるしかないよ、それには私は反対だ。」
「…念の為エドゥアルド隊長に打診はしている。後は第3医療隊としての回答待ちだ。」
「団長からOK出てるなら、向こうも嫌とは言わないよ、きっと。」
「どちらにせよ、回答待ちだ。私が決めることではない」