第24章 手紙
ゆっくりと過ごしたい気持ちはあるけれど、今日はお休みじゃない。休憩時間は限られてて直ぐに過ぎてしまう。
「じゃあな。」
「うん。またね」
寂しいと思うのは勝手なのかな?
顔には出さずに。と気をつけながら建物から出ていくリヴァイの背中を見ているとクルリと振り返った。
「たまには、お前が本部に顔出せ。ハンジはお前の部屋をそのままにして待ってる。」
リヴァイはそう言って厩舎から愛馬を連れて本部へ走った。
思わず泣きそうになった。いつ戻れるかなんて分からない私の部屋を残してるなんて。
本部へと走る俺の脳裏には、さっきのティアナの顔が浮かぶ。
驚きで瞳を大きくして潤んで。口元を隠して。
一体何を驚いて泣きそうになってんだか。
あれ以上あの顔を見ていたら俺はそのままティアナを連れて帰ってしまっただろう。
それではティアナに迷惑をかけるだけだ。
早く来い。立ち寄っただけでもいい。
お前の場所に、来い。
「ティアナ、ズルい。」
「え、何?」
「だって、この前の紳士といい、今日の人といい。ティアナの面会に来る人ってみんなカッコいい。ズルい」
一緒にリハビリ用具を片付けているとリシナからのかわいい苦情。
「誰か私にも紹介して欲しいっ!」
「リシナったら。好きな人いるんじゃなかったっけ?」
「…そうでした」
思わず大笑いしそうになって、心のなかで仕事中、仕事中。と呪文を唱える。
シュニッツェルさんが、鍵を掛けに来る時間まで後、少し。それまでに全部きれいに片付けなくちゃ。
「リシナ、私の部屋で好きな人誰か教えてもらうから」
「いや、いやあ!」
満更そうでもないリシナは顔を赤くして用具を片付けていった。
その夜、リシナと二人遅くなるまで女子トークを繰り広げて、わかってしまった。リシナの好きな人。
「伝えないの?」
「無理無理無理!ダメじゃん、仕事出来ない」
「でも、ずっと見てるだけ?」
「うん…それでいい」
可愛い。一言に尽きる。リシナを応援したい。
「何か応援できることない?」
「いやいやー、やめて何もしないでえ!」
本気で嫌がるリシナに何もしないと誓って二人で笑って過ごした。