第22章 会えない二人
ミケから事の次第を受けたエルヴィンは顔を歪ませたが、比較的ハンジに心許している事と観察力、行動力のあるハンジに任せることにした。
それに。行き先には見当がついている。先方には迷惑をかけるが、この流れでは仕方がない。
はあ、大きな溜息を吐くエルヴィンにミケは「いいのか?」と主語のない問いかけをする。
「構わない。ハンジなら以前からリヴァイを気にかけていたし解決して来るだろう」
「悩ましいもんだな」
フッと鼻で笑いながらミケはエルヴィンに言った。
カツカツと早足で兵舎を出て厩舎へ横見ること無くハンジは進む。後ろの気配を気にしながら。
勘のいいリヴァイのことだ、これから何処へ向かうのかは、わかっているだろう。それでも黙って着いてくるのはきっと彼自身も燻る何かを解消したいのかも知れない。
馬に乗り、リヴァイも同じように騎乗したのを確認して強く馬を走らせる。
門番を無視してしまったので後ろから門番の大声も微かに聞こえるが気にしない。まっしぐらに最短ルートで向かう先はティアナのいる第3医療隊。
「待った!ティアナ、それはこっち!」
ユンカーもリシナも本部から戻ったティアナがまたミスするのを止めた。
あれ程、注意しても簡単なミスが絶えないティアナにユンカーはリシナにそれとなく、聞き出して欲しいと頼み、リシナもまたティアナの何処か心在らずなことが心配であれこれしてみたものの、何があったのかは判らずじまい。
「あっ、私また…すみません…」
「謝っても駄目だよ。何度目だ。何処か調子でも悪いのか?」
「いえっ!申し訳ありません。不注意でした!以後、」
「それじゃ仕事にならないから今日は部屋に戻って頭を冷やしなさい。悩みがあるなら今、相談して欲しい」
「悩みはありません。」
「そうか」
部屋へ戻る後ろ姿を見送って、眉間を人差し指と親指で解しながらユンカーは思いの外ガンコなティアナに少々呆れた。悩みか、何かなければ以前のティアナでは考えられない。
ハンジ辺りに覚えがないか、問い合わせようと決め、ティアナの残りの仕事を含めこなしていった。