第4章 探してるものは見つかりますか?
ファーランは焦っていた。
(クソっ!見つからねぇ!何処に隠してんだよ)
エルヴィンの不在を度々狙っては執務室に忍び込み、文書を探すが、中々それらしきものは見つからない。
最初こそ鍵のかかった引き出しにニヤリとしていたが、どうでもいいものばかりで目的の文書は見つかっていない。
部屋は簡素だが、本棚にはキッチリと背の高さを合わせた本が詰まっていて一冊ずつなかを確認しても、出てこない。
シンプルな部屋だけに簡単に見つかると思ったのが甘かった。
隠すのに最適なところは探し尽くした。
壁も叩いてみた、本棚の奥も探した。
(まぁ、よく考えれば、そうだよな。見るからに用心深そうな奴だしなぁ。でも手強いと、やる気出ちゃうよな。)
あのエルヴィンという男は最初から一筋縄でいかないと感じていたし、そうそう尻尾は掴ませてくれないようだ。
それがファーランの癇に障った。
(俺なら、どこに隠すだろう、こんだけ部屋を探したなら後は肌身離さずに持ち歩くか?誰かに預けるか…よくエルヴィンの執務室から出てくる奴らは?
あの男が信頼してそうで意外性のあるのは?
ミケとかいう大男……ハンジとかいう巨人オタク…
後は…………地味な女が何度も出入りしてる。役職もない一般兵のようで、何者かよく分からない。
最初にあたるなら、あの女からかなぁ。残りの二人は如何にもって感じだし、ありがちだよな。
あの女が実はエルヴィンの女ですって事もあるし。)
違う視点で考えていると、合図がきた。
(まったく、手掛かりもない、時間もないときた。)
侵入経路を伝って慎重に部屋を出た。
見つかっては元も子も無い。
勿論、形跡は残さずに執務室を後にした。
その頃リヴァイはイザベルとともにエルヴィンが戻るのを警戒していた。
死角に隠れてエルヴィンの姿が見えたらファーランに合図を送る役目だ。
リヴァイはエルヴィンからの屈辱は忘れてないし、忘れる気もサラサラない。
なんなら、力押しで行ってもいい。
一番手っ取り早く事が済む。
(…だが、そうすると事が大きくなりすぎる。
王都での生活に焦がれている二人の望みが潰えて臭い地下へ逆戻りになる。それだけは避けたい。)
コツコツと石造りの廊下を叩く音がヤケに響いた。