第8章 楽園の果実
「それで泉宮寺さん。今回の狩りの客席にはその彼女、”真壁亜希”も連れて行こうと思っています」
そう言う彼、槙島聖護はソファーに座って脚を組みながら、紅茶の隣に置いてあるプレートの上に乗っかった一口サイズのスコーンを一つ手にとった。
「私は全然構わないが、君は本当にそれでいいのかね?」
「えぇ。亜希が狡噛慎也を再び目にした時、どのような反応を見せてくれるのか、とても楽しみなんです」
「………君の愛は、歪な形をしているね」
しかしその肝心の獲物についてだが、と言った彼は槙島に問う。
「……私は生け捕りにはしないよ。いいのか?」
白い光が差し込む部屋に置かれた大きなテーブルにコトンと赤いシェルを並べて泉宮寺は言った。
「勿論。どうして生け捕りなんて?」
と泉宮寺の言葉の意味を尋ねた槙島。
「……君は気付いていないようだから言っておくが……」
「狡噛慎也、その名前を口にする時———」
———君はとても楽しそうなんだよ。
その泉宮寺が言った言葉に槙島聖護は微笑んだのであった。