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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第8章 楽園の果実





 雨がザアザアと降り注ぐ中、生徒の死体が見つかった現場で彼女、霜月美佳は傘もささずに突っ立っていた。警察のドローンが霜月目の前を通り、幼馴染を運んでいく。目を大きく開けた霜月は、口を開けたまま言葉を失っていた。そんな彼女に公安局の刑事、六合塚弥生が近づいて声をかけた。

「大事な友達だったのね」
「……分かりますか?」
 霜月の声はか細かった。六合塚は「顔を見ればね」と答える。

「私はあの子に、大事なことを伝え損ねました……」
 喋りはじめる彼女。
「『葦歌 葦歌』って……全然私のことなんか気にしてくれなくて……」
 「『王陵璃華子に相談しろ』ってあの子に進めたのは、私なんです……っ」と、涙が溢れた彼女は両手で顔を塞ぐ。
「一人で行かせるべきじゃなかったんです……! 私が殺したようなものです……っ!!」
 彼女は泣きながら喋る。そんな霜月に六合塚は肩に手を添える。
「……今のうちに泣いておきなさい。じゃないと、色相が濁っちゃうわよ」
 六合塚は、霜月を抱き寄せる。霜月は今までとは違う、張り詰めていた心がはじけたように六合塚に手を当てて泣きじゃくる。大切な幼馴染の死に、嘆き悲しんだ。


 しばらく彼女に寄り添っていた六合塚だが、端末から聞こえるコール音に気づいて応答する。


『クニっちー、遺体の回収終わったから戻るよ〜』
 縢の連絡に「……了解」と返事をした六合塚はまだ涙が止まらないでいた霜月の体を離す。

「……またね、霜月美佳さん」
 と、遠くなっていく足音と六合塚。小さくなっていく六合塚の背中を見ていた霜月はやがて、目力を強くさせ彼女の姿を見ながらこう言う。


「公安局………」




 ———霜月の両目からは、まだ涙が溜まっていた。そしてその涙は、霜月の頬へ落ちていった。
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