第2章 常守朱は認識する
———西暦2112年、日本。
人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測を可能とし、それを数値化する機能を持つ『シビュラシステム』が導入された現代の日本。人々はこの値を通称『PSYCHO-PASS(サイコパス)』と呼び習わし、有害なストレスから解放された"理想的な人生"を送るため、その数値を指標として生きていたのであった。その中でも、犯罪に関しての数値は『犯罪係数』として計測され、たとえ罪を犯していない者でも、規定値を超えれば『潜在犯』として裁かれていた——。
——都市部。
11月に入り、5日目。吹く風の冷たさもそれなりになってきた。ヒューヒューと風が吹く。この街のビルの周りは今にふさわしく同じような建造物ばかりのビル街で、いわゆるビル風と言われる風も行き来をする人達にとっては寒さを感じさせるものだった。
——厚生省、公安局ビル。
シンボルである八角系のタワービル。地上88階、地下8階の巨大なビルで、屋上にはヘリポートが設置されているこのビル———、そのビルの41階、刑事課オフィス。風を切って回っている換気扇のプロペラが3つある。——その一室で先月、この刑事課の一係の“監視官”に配属となったばかりの新米エリート刑事、常守 朱(つねもり あかね)が居た。
まだ二十歳になって半年と1ヶ月ちょっとの彼女の髪色はダークブラウンで髪型はショートボブ。目は全体的に大きく真っ直ぐな瞳をしていた。そんな彼女、常守はある事件の報告書を製作していた。